物理のデータ解析でバブルを防ぐ

膨大なデータ解析に物理の発想。バブルとその崩壊を未然に防ぐ

経済物理学が為替市場の分析ツールとして注目を集めています。

 

ここ10年、為替の取引の記録が秒単位で見られるようになり、莫大なデータの解析が可能になりました。これによって金融市場のさまざまな動きが見えてきました。たとえば為替ディーラーの行動。データを解析すると、ディーラーたちは過去三分間程度で起こる市場の変化に敏感に反応する。取引数が増えると自分の時間を速め、取引数が減ると自分の時間を遅くしてひと息つくこともわかってきました。ディーラーのあいだでは「10分ひと昔」という言葉があるのだそうですが、まさに数分単位で動いているわけですね。ディーラーはファンダメンタルズや日銀介入などのニュースを重視しているわけではないようですね。「9・11」のような突発的な事件は別として、ほとんどの場合、ディーラーはさまざまなニュースを先読みしており、織り込みずみです。ディーラーたちはむしろ市場価格のトレンドのほうに敏感になっています。

 

為替市場の予測はどこまで進んでいますか。

 

そもそも為替市場にはカオスが存在し、売値と買値のわずかな誤差が差を増幅させ、変動はつきものです。しかも、順張りのディーラーが大勢を占めれば価格変動を増幅させるという特徴もあります。J詣fに予測するのは不可能です。現在、研究中の「PUCK」モデルではパラメーターを時々刻々と変えられるのが特徴で、さまざまな現象をとらえて動的な分析と予測かできるようになりました。勘と経験に基づいたディーリングから、科学的に可視化したモデルをつくるのが狙いです。

 

非常に短い単位での予測可能性についてはかなり研究が進んでいます。たとえばディック(取引の単位、平均七秒)レベルで次の価格が上がるか下がるかの変動統計を調べ、ランダムな場合と比較するといラ実験を行なったところ、当初は異符号が出やすかったのですが、20ディック程度(数分間)のスケールでは同じ符号が続きやすいという結果が出ました。今年、学会発表しました。金融機関とも実際のデータを使って市場予測の共同研究をしているところです。

 

PUCKモデルの課題は何でしょうか。

 

莫大なデータにはノイズも多く含まれています。それを効率的に除去する方法は見つかってきていますが、まだまだ課題でしょう。今も統計的有為性のあるレベルには達していますが、精度はもっと上がっていくでしょうね。

 

将来、PUCKモデルはどのように使われますか。

 

現実の為替取引を仮想市場で実験できるので、暴騰や暴落のメカニズムを解明することもできるでしょう。どんなパラメーターを除いたらいいかなど、わかってくると思います。研究者としては、バブルや暴落を防いだり、ハイパーインフレを未然に防いだりなどにこのモデルを応用したいと思います。